調査のきっかけ
アーバンネットワーク管内のポケット時刻表は、乗換駅を除けば見開き3面横書きの駅が大半を占めています。1. 表紙(ダイヤ解説や路線図) 2. 上り(平日) 3.上り(土休日) 4. 下り(平日) 5. 下り(土休日) 6. 裏表紙(広告等) という基本コンテンツを逸脱しない限り表裏合わせて6面で足りるからです。さて、阪和線のポケット時刻表を収集するうちに、路線ごとに統一されていると思いがちな時刻表デザインが駅ごとで異なっていることに気づきました。路線を通して俯瞰したデザインの多様性をご覧ください。
阪和線の特徴
まず、時刻表配布が終了した2010年代に比べて2000年代はデザイン変化の動きが顕著でした。アーバンネットワーク管内では平成22(2010)年の近畿統括本部発足が大きな出来事ですが、日根野以北のポケット時刻表は平成24(2012)年3月の改正までは大阪環状線や大和路線とデザインが統一されることなく縦書きを採用するなど、独自路線を歩んでいました。
さて、前文でも少し触れましたが、2000年代の阪和線のポケット時刻表は日根野以北では大阪支社内と同じ表紙を用いたものが多く、表紙位置と文字の向きのみが他路線と異なっていました。和歌山支社内であった長滝以南は橋本駅など他の和歌山支社内の駅と同じ表紙デザインであったり、和歌山支社のデザインが採用されていました。さらに、美章園に至っては他駅と全く異なる個性的なデザインの時刻表を配布しており、路線全体を見ると多様性に富む時刻表配布スタイルでした。
天王寺駅デザインの変遷
天王寺駅のポケット時刻表は平成27年(2015年)までは、縦書きと横書きが混在した4-6面で構成されていました。特に阪和線欄は近鉄さながらの縦書き&種別分離型の表記を取っていました。さらに2000年代は阪和線欄のみ左に90度回転して配置されていた点も注目です。
美章園駅の時刻表の特徴
先でも少し触れましたが、美章園駅で配布していたポケット時刻表は筆者が知る限りアーバンネットワーク内ではここだけとみられるデザインで、独自で発注したようなものでした。なんと表裏1面ずつの名刺サイズで縦書きかつ行先の区別にカタカナを用いるという独走ぶりです。平成10(2000)年代は大阪支社管内で普及していた3面タイプが阪和線内にも広く浸透していた時期なので、美章園駅でこういった発行の仕方をしているのは非常に興味深く見ることができます。阪和線は平成24(2012)年に横書きに統一されますが、それ以前から横書きを採用していたということになります。ただ時間帯欄を中心に配置した“人口ピラミッド型”は首都圏地下鉄のポケット時刻表を彷彿させるものでもありました。
泉州~泉南地域の時刻表の特徴
こちらについてはすべての駅が確認できなかったのですが、北信太以南のいくつかの駅では、大阪支社で広く使われているデザインが浸透しつつあった平成10(2000)年代において、表紙を丸々地元企業や医療機関の広告に充てた独自デザインの時刻表を配布していました。また日根野駅については特殊で、上述の通り「3面縦書き表紙右」が特徴の阪和線内にありながら、平成24年に左表紙に統一されるまでの間に表紙位置を右左で行ったり来たりしていました。
長滝~和歌山間のデザインの特徴
長滝以南は和歌山支社管内にあたります。ポケット時刻表デザインは和歌山支社内で統一されたデザインが適用されていました。やはり表紙の路線図を見ても大阪南部~和歌山県が強調されたイラストになっています。近畿統括本部発足後もここは和歌山支社独自スタイルを貫いており、ポケット時刻表デザインで見た場合に阪和線が分断される境界にあたるといえます。
和歌山駅に着目したデザインの変遷
和歌山駅はこれまで様々なデザインを採用してきました。最終的には支社内の他の駅とデザインが統一されましたが、20年前はジェイアールシー社っぽいデザインのものもありました。また、アーバンネットワーク管内では県庁所在地駅の特急列車の発着時刻をポケット時刻表上で省略する駅もある中で(特にH18年より前)、和歌山駅では1990年代から2020年代まで一貫して特急くろしお、スーパーくろしお、オーシャンアローの時刻を掲載しています。
本記事は以上になります。お読みいただきありがとうございました。